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シンガーソングライター・しずくだうみの紡ぐ世界に酔いしれるまで

シンガーソングライター・しずくだうみの紡ぐ世界に酔いしれるまで

「今日は顔の調子が悪いので撮影不可です」

ステージに現れた彼女が初めに発した言葉だ。

エッジの効いた冗談だと思い、私は気にせずカメラを構える。

ファインダー越しに、彼女と目が合う。

「撮影、だめです」

彼女はそう言って、恥ずかしそうに私の持つカメラから身体ごと背けてしまった。

申し訳なさと残念な想いに浸りながら、私がカメラを下ろすと、主催者らしき女性に「気にせず撮って大丈夫ですよ」と耳打ちされ、せっかくなので、控えめに撮らせて頂いた。

演奏が始まる。

今までの空気が一気に変わった。

彼女が歌うと、その場の空気は彼女のものになる。
暖色のライトに照らされた場内は、彼女の歌声とリバーブの効いたギターの音色に包まれ、奇妙な空気感に満ちた。

彼女の歌は、力強く響き、丁寧に、そして繊細に言葉を紡ぐ。
行方のない冷たさ、一方で懐かしい温かに、指先で触れるような、そんな感覚を私に抱かせた。

演奏が終わるたび、空気が張り詰める。
シンとしたその空間がとても心地よかった。

「ずっと聴いていたい」

隣の少女のその言葉が、印象深く響いた。

シンガーソングライター「しずくだうみ」の世界

撮影:朝岡英輔

しずくだうみという “闇ポップ系” シンガーソングライターがいる。

そのしずくださんとお話ができるということで、近くのカフェで先に待っていると、しずくださんが現れた。

「どうも…」

しずくださんのその言葉からあまりにも生気が感じられなかったので、私は思わず「体調悪いのですか」と訊ねてしまった。

「体調悪いのはいつものことです」

と、しずくださんは言う。ステージに立つあの女性とは別人なのか?という想いに駆られたが、ますます彼女の事を知りたくなった。

しずくだうみの紡ぐ言葉

まずはしずくださんのことを知ってもらうため、彼女の歌を聴いてほしい。

例えばこの曲。

『いじわるなきみのこと』という曲である。

独特なリズムに乗せられたその歌は、聴けば聴くほど頭から離れなくなる。歌詞もありふれた言葉からありふれた日常を描いたはずのものであるはずなのに、なんだか行方の無さを感じさせる。

チョコレートくれるのは良いけどいじわるするのやめてよ
近道教えてくれるのは良いけどひざかっくんするのやめてよ
勉強しないのは良いけど点数良いのやめてよ

当たり前のように繰り返される毎日の一部を切り取った歌詞と、そのポップなメロディが醸し出す気怠さに魅せられ、私は毎日この曲の冒頭を口ずさんでしまうようになった。

恐るべし、しずくだうみ。

次の曲は『夜の海の夢』

先ほどとは打って変わり、暗い旋律に乗せられた歌声は重く響く。
キャッチーなサビのメロディに掴まれ、夜の海が波を打つ姿を想像させる。

どの曲も全く別の趣がある。
それなのに、どの曲も彼女らしい。

私が彼女のことを ”多彩な人” と形容したくなる所以でもある。

なぜ彼女は歌うのか?その原動力は?

そんな空気感を作り出す多彩なしずくだうみさんに、どうして歌を歌い続けるのか訊いてみた。
なんだかすごい返答が返って来るのかとも思ったが、その答えはシンプルだった。

「ただ好きだからです。歌い続けたいからです。 」

ただ日常生活を送るだけでも、不安を感じることが多いとしずくださんは言う。
それでも、ステージの上では大好きな歌が歌える。

誰かを変えたいわけでもない。
伝えなくてはならないことがあるわけでもない。
ましてや、目の前の人を感動させたいとも思っていない。

ただ自分というコンテンツを楽しむために、遊びに来てくれる人が居る。
そうやって歌い続けられるだけ、いいじゃないか。

好きだから、歌い続けたい。

しずくださんは、淡々と音楽にかける想いを語ってくれた。

「音楽が無くなったら死んでしまいます」

「別に音楽が無くても生きていける。それでも音楽がある方が人生は豊かだ」

別のアーティストの言葉を思い出した。

彼女は彼らと違う。音楽が無いと死ぬと、惜しげもなく言い放った。

その原動力は?と訊くと、「落ち込んだり、傷ついたときに曲を書く」と教えてくれた。

しずくださんにとっての歌とは、そういったどうにもならない感情を表現するために在るのだと思い知らされると同時に、この人は真のアーティストだと心から思った。

「歌をやめる想像がつかない」

生み出し続けることに苦悩はないのか?そう訊ねてみた。

「ただ日常を当てはめているだけなのでそれはないです」と彼女は言う。

確かに、彼女の紡ぐ言葉は日常に根差したものが多い。彼女が思ったこと、感じたこと、ただそれを歌にする。

それ故に「もっと共感を誘うような言葉を綴ったほうが売れるのでは?」という葛藤もあるようだが、それでも「売れることが目標」なのではなく、「音楽をしながら生きていく」ことこそが、彼女の在り方なのだと言う。

しずくだうみの素顔

しずくださんは “闇ポップ” を自称している。
確かに、私が彼女と話して最初に抱いた印象は「体調が悪そうな人」だ。

しかし、彼女と話せば話すほどその闇は光と同居しているように思う。

いくら「いつだって不安で一杯」だと言っても、彼女が節々に見せる笑顔は非常に温かいものだ。
自分はお喋りなんだと自嘲気味に笑う。
相方のギターの真似をして戯ける。

その時の彼女の素顔は、とても人懐っこく、ついついこちらも無防備な笑みを浮かべてしまう。

一方で、彼女の音楽に対するあり方はとてもひた向きなものを感じさせる。

歌を歌い続けるためにはどうすればいいか?
それを逆算して生きる。

妥協はしない。

また、彼女は楽曲製作・提供を行うだけでなく、PV 製作の際に自分で映像を手掛けることもあるという。
それは、できるだけ自分の世界観を忠実に再現するためだ。

彼女にしかできない彼女の生き方を貫く姿に、私はひたすら好感を抱いた。

そんな大そうなものではないです、と彼女は言う。

「ただ歌を歌っていたいんです。」

そんな彼女の歌を、もっとたくさんの人に届けたいと心より思う。

PS.しずくださんのツイッター、シニカルに富んでいてとっても面白いです。

しずくだうみ

Twitter:shizukuda_umi
HP:http://szkduminfo.tumblr.com/

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