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学生のための居酒屋 KYU-KANBI が叶えた“こんな場所があれば”という想い

学生のための居酒屋 KYU-KANBI が叶えた“こんな場所があれば”という想い

例えばあなたが大学生の頃、とりあえず行けば顔なじみの常連と会えるような酒場が自分にもあれば…などという想像をしたことがあるかもしれない。

しかもそれが、大学のそばに在り、集まるのがその大学の連中ばかりで、店員も店主も同大学の奴らだったらなお良いだろう。

連日バカ騒ぎで、安く飲んで、時には知らない連中と仲良くなれる、そんな酒場があればいいのに…その想いをそのまま体現した夢の様な酒場が、関西学院大学のそばにある。

洋風酒場KYU-KANBI店主のシュンさんは、関西学院とは縁もゆかりもない私を快く招き入れてくれた。

 

関学卒業生による学生のための居酒屋 “KYU-KANBI”

KYU-KANBIの店主であるシュンさんは、関西学院卒業後、3年務めた某大手企業を退社し、今年の4月に開業を果たした。「大学生のために、様々な人と交流できる場を作りたかった」という想いを実現したシュンさんは、お店に遊びに来ている大学生から非常に親しまれているようだった。

 

その中の一人として、案内役になってくれたのは関西学院3年生のミーハーちゃん。ミーハーだからいつしかミーハーと呼ばれるようになったらしい。おそらくとんでもなくミーハーなのだろう…という思案はさておき、彼女はバリバリの関西弁で「ここが私のホームや」と、まるで自分の宝物を見せびらかす様な素振りでこのお店まで案内してくれた。

店主のシュンさん

 

店主であるシュンさんに招き入れて頂き、彼を含め、前述のミーハーちゃん、そしてシュンさんのお友達で卓を囲い、お酒を囲いながら様々なお話を聞かせて頂いた。

 

シュンさんに学生からどのように呼ばれているのかと訊く。「店長とかシュンさんとかマスターとか…まあ何でもアリですね」と彼は答え、それに対しミーハーちゃんは「私はシュンさんのこと良い人過ぎて聖人君主と呼んでいる」と露骨な嘘を吐いたが、そう言いたくなる気持ちがわかる。

 

とにかく店内は活気に包まれており、他の卓で飲んでいる学生たちも盛んにシュンさんに話しかける。シュンさんも楽しそうにそれに応える。

 

「いいお店ですね」とシュンさんに言うと、彼は恥ずかしそうに笑い、それを聞いたミーハーちゃんは「やろ!やろ!」と嬉しそうにはしゃいだ。その様子が、開店間もない居酒屋とは思えないほど馴染んでいた。

KYU-KANBIが親しまれる最大の理由

 

この居心地の良さはなんだろう?と、ずっと考えていた。知らない土地で、知らない人に囲まれながら、気づくと私は不思議な安心感に浸り、その場をすっかり楽しんでいた。

 

店内は趣味全開の内装が施されている。これらは全て手作りであり、電気やガスなども知人のツテを頼り、一部を除いて業者を介入させることなく作り上げられている。

とにかく、無機質な要素を取り入れたくなかったとシュンさんは言う。

コップを割っても良い。喜んで掃除をしよう。店をぶっ壊しても良い。喜んで建て直そう。なにをしてもよい、何時でも居ても良い、ただし、他のお客さんに迷惑をかけなければ…。

とにかく、自由で、様々な交流があり、昔ながらの酒場というコンセプトに適った印象を強く与える。

再び、この安堵感は何かを考える。

このお店の店主は関学出身であり、お客さんのほとんども、そしてアルバイトでさえ関学含むこの地域の学生であるが、この一体感は、ただ地域の学生たちに縁があるから、というわけではなさそうだった。

ただ一つ確かなのは、この場所にいる全員がこのお店に対し愛着を抱いている、ということだ。あるいは、それは人に対してかもしれない。

だから、学生たちに「何をしても良い」と店主のシュンさんは語るが、学生たちは極力お店に迷惑かけないよう、無茶な注文もしないし、繁忙時は注文も自重する。時には、料理やお酒も自身で取りに行くようなこともあるのだという。

 

きっと学生たちが「相手が生身の人間である」という当たり前のことを理解しているからであり、それは店主であるシュンさんの人柄が強く反映されているのかもしれない。

「ここは9割が常連」とシュンさんは言うが、彼の親しみやすい人柄に触れれば、それはそうだろうと思わずにいられなくなるだろう。

働くということ、楽しむということ、人を想うということ

 

少し真面目な話になり、「二号店を出すことも考えている」とシュンさんが言う。すると、私の向かいに座った学生が「是非そこで働かせてほしい」と目を輝かせて応えた。

バイトの学生である女の子に、ここでのバイトは楽しいかと私が訊ねる。

「掛け持ちしているもう一つのバイトよりも断然こっちの方が楽しい。なによりシュンさんと働けるのが嬉しいので」

と、彼女は笑顔で答えた。

そんなことを話しているうちに、シュンさんの元勤め先の上司だった、という女性二人がご来店された。彼女らの話を聞くと、「このお店が好きだからよく来る」という。

 

みんな、この場所に、ここに居る人に魅力を感じて、ここに居るのだ。

それはもしかしたらとんでもない事なのかもしれない…。

 

「自由で気兼ねない交流の場に、学生は意外と飢えているのかもしれないですね」

私がそう言うと、シュンさんは少し考えこみ、

「学生だけじゃなく、社会人は特にそうかもしれません」

と言った。

「僕は叱るのが苦手なので、学生には命令もしないし、自分で考えて行動してもらっています。楽しく働かないと意味が無いので」

確かに、人との間の垣根を取っ払った、さながらKYU-KANBI同様の酒場が、もっと社会人のために在れば…そして、誰もがこんな風に楽しんで働ける場所があれば、と思わずにはいられない。

帰りに、皆さんの写真を撮って良いですか、と私が言うと、店内の人々がわらわらと集まってきた。

謎の素敵な集合写真を撮らせて頂き、私はお店を後にした。

来店時と同様に、帰りもミーハーちゃんが駅まで送ってくれるという。

ふと、最初は気づかなかったのだが、KYU-KANBIの目の前に某有名焼き鳥チェーン店があることに、お店を出て初めて気づいた。

私がミーハーちゃんに「こんなところにこんな有名店があったんだ」と言うと、彼女は「KYU-KANBIが満席の時、しょうがなくこっちのお店に入る。本当は嫌だけど」と、露骨に嫌そうな顔をして言った。

これが関学ではなく、他の大学のそばにあれば学生たちは大変喜ぶだろうに…と、KYU-KANBIの隣に建てられた例の没個性な焼き鳥屋について、同情の念を抱きながら私は駅へと向かった。

洋風酒場 KYUKANBI
アクセス 兵庫県西宮市松籟荘 7-28 コボリマンション 1F
電話 0798-39-7410

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