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駆け出しコピーライターが「言葉」を仕事にすることを選んだ理由

駆け出しコピーライターが「言葉」を仕事にすることを選んだ理由

「M1グランプリ、観た方が良いですよ」

と言われたので、「なぜですか」と私が返すと、彼女はこう応えた。

「泣けますから。お笑いに生活を捧げる人たちの想いが凝縮されたその作品が、泣けるんです」

確かに、自分を自分の好きな何かに捧げよう、という生き方は、時に人の心を揺さぶる。

特に「言葉」を仕事にするのだと決意した彼女にとって、「芸」に身を捧げる彼らのような生き方は、強く自分の生き方を照らし合わせるものなのかもしれない。

彼女が「言葉」を仕事にすることを選んだ理由

今回取材の協力を頂いた ちすけさん は、現在コピーライターのアシスタントとして将来の舵を切り始めた24歳の女性だ。

なぜ彼女は言葉を仕事にすることを選んだのか、

彼女はこっそりと私に教えてくれた。

彼女がその選択をするまでの道のりは決して簡単ではなかっただろう。

しかし、だからこそ彼女の言葉は、身に迫るものを私に強く感じさせ、また「言葉」の力というものを、改めて考えさせた。

周りに溶け込むことができなかった思春期

ちすけさんは内向的な思春期を過ごしてきたと言う。本を読み耽るうちに、独自の世界観を築き、人との関わりを好まなくなった。その頃から自分でも小説の執筆を始め、気づけば学校内において自分がマイノリティである事を強く意識した。

しかし、大学入学と同時に状況は逆転した。

デザイン専門の大学に進学すると、周りは自分と同じような「一人で黙々と好きな作業に没頭する人」に溢れていた。そして、そのような人間は得てして「周囲に溶け込むことが苦手な人」であることが多い、と、ちすけさんは教えてくれた。

「そこは青春時代を肩身狭い想いで過ごしてきたような人達ばかりで、もはや自分はマイノリティですらなかった」

彼女は、追い打ちをかけるように「その最高の環境を卒業することに並々ならぬ抵抗を感じ、就活は早々に諦めました」と笑いながら話してくれた。

上京の転機になった言葉たち

ちすけさんは、大学で創作に耽る人たちに囲まれながら、自身でも様々な作品を手掛けたが、大学卒業後は就職を選ばず、地元でフリーターをつづけていた。

喫茶店で働いているうちに、ひょんなことから「言葉」を仕事にしよう、と決意のキッカケを得た。

「色々なお客さんに自分の書いた小説を見せていて、最初は褒められていたのですが、その誉め言葉がどんどん “それを仕事にしろ” という声援に変わって行ったんです」

自分の言葉は、通用するかもしれない。

そのような想いのもと一発奮起し、東京に出てきた。

最初の仕事は、広告ライターだった。
購入意欲を誘うような甘い言葉を日々並べた。
自分は何のために言葉を綴っているのだろうと自問した。

創作の楽しさを見出すことができない、それが誰のために役に立っているのか全く分からない。
むしろ、自分の言葉が人々にとってマイナスに作用しているのではないか。

そのような疑問を抱き、早々に退社を選んだ。

当たり前のように宙を飛び交う「言葉」の力

だから、今度は。

人々の心に残るような、人々の心を前向きに支えるような、そんな自分の言葉を紡ぎたい。

「言葉って、誰かにとってプラスにもなるしマイナスにもなるんですよね」

例えば、大好きな小説からもらった言葉、喫茶店のお客さんからいただいた力強く優しい言葉。
確かにそれらは、自分を良い方向に導いてくれた。

一方で、周囲の人間の心無い言葉。
それは時に人を無意識のうち傷つけてしまう。

言葉は生活に欠かせず、どこにでも溢れているからこそ、大切に扱わなくてはいけない。
彼女が小説を執筆するうえで、一番伝えたいことはそこに在る。

この『宇宙旅行』という短編は、ちすけさん自身を投影された作品だ。
自身の「ほくろ」の多さに対する周囲の心無い言葉に、主人公は傷つく。
だが、ついその「ほくろ」を愛してしまいたくさせたのも、また違う言葉だった。

この短編にも、どれだけ言葉が人の心を突き動かすか、という想いが強く秘められている。

「今まで沢山の言葉に後押しされた私は、同じように人の心に残るような言葉を届けたい。そして、言葉は人を傷つけてしまうこともあるのだという当たり前のことを、私は伝えたい」

当たり前のように宙を飛び交う言葉。
当たり前にあるからこそ、人の心に残るような言葉を紡ぎたい。

だから、彼女はコピーライターという道を選択した。
小説の執筆も続けていくという。

私は、そんな彼女の紡ぐ言葉をこれからも楽しみにしているし、たくさんの人に届けたい、と切に思った。

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