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PGW工藤が語る、eスポーツ産業に最も必要な「プロゲーマーのこれから」

PGW工藤が語る、eスポーツ産業に最も必要な「プロゲーマーのこれから」

「勝たなくても食わせます」

プロゲーマー事業を手掛ける工藤さんは、そう言い放った。

eスポーツが話題になる昨今であっても、「勝たなくても食わせる」を実現することは容易ではないはずだ。

様々な業界がこぞって参加するeスポーツ事業。その市場規模は2020年に20億ドルを超すと言われるが、日本におけるeスポーツ市場は海外と比べるとまだまだ佳境にあるといえる。特に、日本のプロゲーマーたちは数々の困難にぶつかっているのが現状だ。

今回、プロゲーマー事業PGWを手掛ける、株式会社グローバルセンス代表の工藤さんより、「eスポーツ産業がぶつかっている課題」について、「ゲームを仕事にする」という観点から解説して頂いた。

グローバルセンス工藤さんが手掛ける「プロゲーマー事業」

グローバルセンス株式会社 代表 工藤貴之さん
Twitter  :@GsKudo
企業HP   :https://gb-sense.com/company/
PGW HP   :https://progamersworld.com/
———事業の内容はどんなものでしょうか?

「誰もがどんな時も幾つになっても活躍の場がある事業集合体になる」というヴィジョンのもと、グローバルセンスは法人向けサービス以外に【PGW(Pro Gamers World)】というプロゲーマーのための事業を推進しています。

ゲームをするのが仕事である「正社員プロ」という雇用形態を導入し、プロゲーマーを全力でバックアップする事業ですね。

———なぜプロゲーマーを後押しする事業を始めたのでしょうか?

将来に希望と安心をしながら働ける会社を作りたい、そのヴィジョンからです。

最初の会社を立ち上げたときに、ゲームが本当に得意な子がいた。得意を超えて天才的。けれども、彼は人とのコミュニケーションが苦手だった。素晴らしいゲームプレイという才能を活かす場所が当時は無く、人とのやりとりが苦手だった彼は、ある日行方を眩ませてしまったんです。

彼にとって才能を最大限に発揮できる場所があれば…そんな想いがあって、会社が軌道に乗り始めた頃にこの事業を考え始め、その思いは年を追う毎に強くなっていきました。

eスポーツの現状・障壁

2018年は、eスポーツ元年と呼ばれるほどeスポーツの名称が普及した年であった。これから最も伸びる市場の一つであると予測され、海外の盛り上がりも一般的なスポーツと並ぶほどだ。

しかしながら、日本ではまだまだビジネスとしての障壁は高い。プロゲーマーという職業も不安定で、「試合に負けてクビになった」と話題になることもある。

そこでまず工藤さんより、「プロゲーマー」という観点から市場における課題を紹介して頂いた。

プロゲーマーの現状

———プロゲーマーの現状はどのようなものなんでしょうか

経済的、将来性において安心して活動できる状況にはない。というのが現状だと見ています。

例えば日本は海外に比べてゲームをするということが社会的に認められていません。海外とは違い、ゲームに熱中していると白い目で見られるのが当たり前。

そもそも、試合に出ることすら難しい。海外や遠方で試合がある時、兼業の場合プロゲーマーは本業の会社で休暇を取って出場していますよね。そこで彼らは、会社に「大会があるので休ませてください」と言いづらいわけです。プロとして大会に出ることに後ろめたさを感じている、って現実もあるのです。

もっと言えば、試合に出ても報酬がもらえないなんていうこともあります。社会的に認められていないし、経済的な支援も乏しい。これが産業の実態です。

———確かに。そのような現状に一石を投じるべく、工藤さんは今の事業を手掛けているのですね

まさしくPGWは、プロゲーマーとしての働き方の選択肢を増やす事業です。正社員プロは、「ゲームをするのが仕事」という職業。営業が「顧客開拓するのが仕事」と同じ枠組みです。

他にも、プロゲーマーを務めながらセカンドキャリアとして手に職つける兼業、という選択肢も必要だと考えています。(これについては、今後手がけていきます。)

なぜならば、私が手がけるタイプのプロゲーマーという職業の選択肢が増えれば、プロゲーマーとして生きていく安心にもなりますし、子供たちが「プロゲーマーになりたい」と言っても将来性を示せるようになります。

PGWより「正社員プロ」という選択肢

プロゲーマーが経済的に安定しない理由

———そもそも、どうしてプロゲーマーは経済的に厳しいのでしょうか

eスポーツが市場として未成熟である理由と直結するけれど、まずは広告効果の薄さ。

プロゲーマーの収入の多くを占めるのは、企業からのスポンサー料。広告効果が薄ければ企業もお金を出したがりませんよね。

eスポーツにはまだまだ観戦者やファンが少なく、広告効果への期待が低い。だから、メジャースポーツと比べてもスポンサー料も低いし継続性も低くなりがちです。

ここがもう少し変われば安定度はグッと変わってくるのですが、多くの要素を変えていかなければ結果として変わらないことなので、今は当然の状況とも言えます。

例えばまずは、市場の下地としての「eスポーツ文化」を築くことも大事な要素だと考えています。

『EvoJapan2019』より

eスポーツが培うべき「文化」

———なるほど、eスポーツ文化はまだまだ未成熟なのでしょうか?

プロゲーマーが市民権を得ていないことは文化の未成熟を示していて、それはeスポーツの発展が難航している理由でもあるんです。

海外で発展したeスポーツのビジネスモデルを真似て、日本では中身よりも先に形式ができてしまった。外面ばかりで、文化を伴っていない。だから、日本のプロゲーマーたちは社会的に認められない。

確かに、海外では、プロゲーマーは立派な職業として認められていて、スターの様な扱いを受けることもしばしばあります。でもそれは、そのような文化を段々と培ってきたから。

目先の利益よりも、まずはプレイヤーもチームオーナーもプロゲーミングの土台となる環境や文化があるかどうかを、それぞれが意識して変えていくことも必要です。そもそも、後述しますが簡単に儲けられる産業構造ではありませんから。

これからどうするべきか

eスポーツの現状と課題について、プロゲーマーサイドという視点で語っていただいた。海外とは大きな差をつけられ、日本では産業としてまだまだ未成熟のeスポーツであるが、今後どのように舵を切っていくべきなのだろうか。

eスポーツ人口を増やすための方法論から見直す

———プロゲーマーの生活が苦しい理由として、広告効果の低さ・文化としての未成熟が挙がりましたが、どのように解決していくべきなのでしょうか

まずはeスポーツについて、沢山の人に芯から興味を持ってもらうこと。それも、ただ海外で流行っているモノ、とか、プロゲーマーの●●さん、のような表面上ではなく、文化としての興味ですね。

文化として興味を持ってもらうために、まずは視聴者としての楽しみ方を伝えていく必要があります。プレイヤーしか凄みも醍醐味も見所もわからないようでは、ノンプレイヤーの視聴者は観てくれません。その上で大会のルールとプロゲーマー個々のゲームと関わった歴史や戦いの歴史を伝えていく環境と活動も必要です

例えば、全くルールを知らないのにラグビーを見ていても、なんとなく熱い競技だとは伝わりますが、芯から楽しく観戦できませんよね。また、プロセスの試合が盛り上がる対戦カードも考えてください。因縁のある団体や選手の対戦って絶対盛り上がるんです。それって、今までに色々な歴史があったから。感情移入ができるから。ボクシングなどの個人競技でも同じで、どんな競技にも言える事なんです。

eスポーツの文化としての成熟を促す

———確かに、eスポーツを盛り上げていくためには、まず競技としての面白さを知ってもらうことが必要ですよね。それでは、文化としての成熟を促すにはどうすればいいでしょうか?

プロゲーマー(プロの競技者)としてのマナーを今以上に良くしていくこと、チームやプレイヤーがポジティブな文化を作っていくこと。あとは、オーディエンスとの距離を縮めること。

プロゲーマーはオーディエンスとの距離が他競技と比べてとても近いですし、近くなりやすい環境があります。ネットワーク越しでオーディエンスと試合できたりするのですから。

これは他競技にはない優位性の一つです。これを活かさない手はない。プロもオーディエンスも一緒に楽しめる世界。この距離を縮めることが、より成熟した、内容を伴う文化を生み出すために必要です。

———そのようなお考えから、PGWの事業内容を手掛けているのですね

そうですね。プレイ動画を配信したり、メディアでの活動も頻繁に行っています。地域大会にも積極的ですし、大会遠征時は近場のゲーセンに顔を出したりもしています。このような機会を人々の理解や興味を深めるうえでPGWは大事にしています。

PGW Ren(レン)さん

eスポーツは「金の生る木」ではない、という認識

———そもそもお金儲けにならない、との事でしたが、それについて事業者たちはどう認識すべきなのでしょうか。

事業計画を長期視点と多面的効果を織り込んで作る。ということは言うまでもないです。

実はグローバルセンスでも、PGW事業は利益を出している、とはとても言えない。単体で見れば赤字です。けれども「プロゲーマー正社員」という制度のあるこの事業を手掛けていることで、たくさんの人にこの会社を知ってもらえるし、この会社で働きたい、なんて声がかかることもある。

つまり、ブランディングですね。当初の予想以上の効果があったのも事実ですが、他部門とのシナジーを確実に生み出しています。このように、eスポーツ事業だけで稼ぐのではなく、バランスというか企業全体としての活かし方を考える視点が必要なのではないか?と感じています。

———「目先の利益よりも~」とはそういう意味でもあったのですね。

伸びそうな市場といっても、先に市場を磨くコストがかかります。これまでゲーマーがゲーマーによる無償の精神で存在を守り続けてきた歴史があります。ゲームもゲーマーのことも大会運営のこともわかっている人々が知恵を絞って時間を投資して、です。

だから、私を含めて事業者だからと言って、資本があるからといっても、簡単にお金を儲けられるような市場ではないのです。人、環境、への投資。ブランディング、プロモーションへの投資など、投資と効果発揮まで時間がかかる課題が多くあるからです。

工藤さんの想い、そしてGSの風景

最後に、工藤さんの人や組織に対する想いを聞かせて頂いた。

プロゲーマーのこれからのために

———工藤さんはeスポーツ市場における課題について、お金のためというよりも、人のために取り組んでいるような印象を受けました。

プロゲーマーの選択肢を作り、生き方を支援する。それはこの会社のヴィジョンそのものなんですよね。

PGW事業はあくまで、子供たちがプロゲーマーを安心して目指せる、そんな社会を作るための一要素でしかない。これからもそのための事業を展開していくし、それを色々な企業が真似してくれたら良いなとも思います。ビジネスモデルも公開して、具体的な手法や自治体に対する提案方法とかも教えて行くつもりです。というのも、並行してやって行った方が絶対に早いですしね。

そして人のために

———なるほど。eスポーツ事業を手掛けるのも、ヴィジョンを追求する一要素ということでしょうか

会社のヴィジョンは、プロゲーマーのみに焦点を当てたものではなく、自社の人間や社会に対してもそうです。

「誰もがどんな時も幾つになっても活躍の場がある事業集合体になる」というヴィジョンに行き当たったのも、例えば両親の介護などのために自分のキャリアを諦め、その後の社会復帰を叶えられず未来を悲観してしまう、そんな人たちを見てきたから。社員が何か困ったことが起きても仕事を辞めずに両立できるような制度がここにはあります。

ただ資産を追いかけるよりも、そういったブレないモチベーションのもと集まった仲間たちといるのは最高にハッピーなんですよね。この人たちを幸せにするためにもっといい会社にしよう、と思ったりもするんです。

GSの風景

非常に人や組織を大切にする工藤さんの人柄が滲み出る取材であった。

グローバルセンス オフィスより

そんなことを思っているうちに、eスポーツ観戦経験の乏しい私たちのため、工藤さんは数人の社員さんに声をかけ、eスポーツの様子を実際に見せてくれた。

タイトルは「ストリート・ファイター」。試合が始まり、プレイヤーの間に緊張感が走る。液晶の中では白熱の格闘が繰り広げられる。段々とオフィスは高揚感に包まれた。気づけば、他の部屋で作業をされていた社員さんたちも集まり、全社をあげての観戦となった。

グローバルセンスの一体感に驚かされると共に、eスポーツの魅力を知った一瞬であった。

eスポーツ産業の現状と課題は?ビジネスモデルから徹底解説

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