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漫画家の苦境を変える?「まんがたり」が見出す “漫画の本当の力”

漫画家の苦境を変える?「まんがたり」が見出す “漫画の本当の力”

あなたの心を動かす本当に面白いマンガ、いつまでも読み続けたくないですか?

当然面白いマンガを読んでいたい、そして、疑うまでもなくマンガを読むという文化は続いていく———ほとんどの人がそう思っているかもしれない。一方、「全体の何%のマンガ家がマンガで生活できているか」をどれだけの人が知っているのだろう?

今回は、そんな漫画業界に一石投じるべくマンガ家芸能プロダクション「まんがたり」を起業した前田雄太さんより、熱い想いを打ち明けて頂いた。さらには「まんがたり」から、マンガ家の現状とマンガのこれからについても紐解いていきたい。

まんがたりさんについて

突然ですが…そのTシャツはなんですか?

僕が「まんがたり」を手掛けるキッカケになったエピソードを漫画にしたものですね。

何となく読んでしまいたくなりません?(笑)

自己紹介にも使える「マンガの力」をお伝えできればと思いまして。

Tシャツにずっと目を取られていました(笑)
それでは早速ですが、前田さんのご経歴をお願いします。

株式会社ワークスアプリケーションズというITメガベンチャー企業で、新卒から九年ほどエンジニアとして勤めていました。前社長の面白さが決め手で入社したのですが、当時彼から「30歳を超えたら会社を辞めて好きなことをしろ!」なんて言われていたんです。

会社以外の場所でも、海外支援の NGO に参加したりして「自分のやりたいこ と」を探っていました。ご縁があった株式会社おかんに勤めながら、現在は現在は週末と平日夜に複業として「まんがたり」という会社の起業を手掛けています。

「自分のやりたいこと」が漫画家を支援することだと気づいたキッカケは?

T シャツで描かれているエピソードがそれですね。起業のための起業ではなく、社会課題を解決するビジネスがしたいと考えていた時期に、漫画家さんのタマゴとお会いする機会がありました。

漫画が大好きだったので、業界裏話が聴けるとワクワクしてたんですよ。 でもお会いして漫画業界の蓋を開けてみれば、大変なことだらけ。

「このままじゃ漫画が読めなくなってしまう!」と、危機感を抱いたのが今の事業を手掛けたキッカケですね。

なるほど。「まんがたり」は、漫画家のそんな現状を変えるための事業なのですね。

「まんがたり」は、「漫画家がマンガを描くことだけに集中できる環境を提供する」というビジョンを掲げる、マンガ家芸能プロダクションです。マンガ家と企業をつなげるための営業、広告宣伝、契約や、契約後の事務関連を請け負っています。

マンガ家はマンガを描くのが仕事。さらには個人事業主でもあり、本来的にはマンガを描く以外の業務も全て自分でこなさなくてはいけない。ですが、マンガ家がマンガを描くことに集中できなくなったら、みなさん大好きなマンガを読めなくなってしまいますよね。

僕は、好きなマンガを好きなだけ読める社会を作りたい。だから、マンガ家を支援する。それが、この事業の原動力です。

前田さんのスマホケース

漫画家の現状と、業界に必要な「もう一つの視点」

前田さんが事業を手掛けることになったキッカケは、漫画家の現状を知ったことだと言う。

漫画家の現状を知らなかった私は、漫画業界についての課題と、「まんがたり」ではその課題をどう捉えているのかお話し頂いた。

(前田さんより執筆協力頂いた漫画家の詳しい現状についてはこちらより)

漫画家の現状について

そんなに漫画家って大変なんですか?

マンガ家志望者の中から、マンガ家への道に立てるのが数%、そしてマンガで生計を立てることができるのはさらにその数%…本当に厳しい世界ですね。さらには、安定した生活を送れるマンガ家は全体の3%、つまり、6,000人いると言われる漫画家のうち100-200人程度しかマンガで生活できていないというデータもあります。

特に僕は、漫画家の「三大問題」と言っているものがあります。それは、お金、 仲間、情報が無いこと。

連載が終われば無収入になるという不安定な生活の中、他の漫画家さんとのつながりも希薄で、さらにはビジネスについての情報を得ようにも良質な情報を得る時間がない、方法がわからない、あるいは適切な使い方がわからない。

下手したら、本当に10 年後、日本の漫画家は半分くらいになってしまうのではないかと思っています。

その現状の背景にはどんな理由があるのでしょうか

雑誌や出版社が増え、さらに電子書籍や漫画アプリの普及により、漫画の在り方が多様化しています。確かにそのおかげで、連載できるようになったマンガ家や漫画の数は増えたものの、出版業界が不況であることには変わらず、コンテンツにお金を払う読者が増えたという事ではありません。

従って、マンガ家の収入が安定しないという現状は変わらず、むしろ「食えないマンガ家」が増え、マンガ業界はさらに不透明になりました。漫画家にとって、プロット、ネーム、キャラ、ストーリーを考えるという膨大な作業量は変わらず、得られ る収入は減る、ということですね。

それに対してどうすればよいのか

その現状を変えて行くためにはどんなことが必要だと思いますか?

まずはマンガ業界というビジネスモデルに、別のキャッシュインを設けること。漫画を描いて、公開して、購入してもらう…という従来の構図以外のマネタイズ方法ですね。

山ほどマンガ家志望がいる中で、 雑誌における「アート漫画」は飽和状態です。 そこで、マンガの新しい収入の得方を模索する。

例えば、企業や商品の PR をする広告漫画ですね。雑誌に載るような漫画家 の想像を形にする「アート漫画」とは対照的に、 他の人から依頼をもらって、その人の期待を超える表現をするマンガを僕は「メディア漫画」と呼んでいます

他にも、メディア漫画と少し似ていますが、企業にお金をもらいながら漫画家が自由にクリエイティビティを発揮して描くスポンサード漫画や、ファンからお金を支援してもらうというモデルも積極的に探っていくべきではないでしょうか。

なるほど、そのお考えが今の「まんがたり」のメディアマンガ事業に繋がってくるのですね

先ほど挙げた「メディア漫画」における漫画家と企業の仲介、及びディレクションですね。「まんがたり」では、漫画の仕事がしたい漫画家と、「漫画で表現される」という新しい広告の切り口を求めている企業を繋ぎ、形にするお手伝いする事業を展開しています。

この事業は、漫画家の「描く」以外の業務を担い、さらに「企業は何を求めているのか?」を双方ですり合わせをし、アンマッチを防ぎます。

というのも、漫画家は漫画を描くことが仕事なので、営業などのビジネススキル を持ち合わせていません。そこで、企業と漫画家さんを仲介し、漫画家のタレント性を活かすという意味で「まんがたり」を「マンガ家芸能プロダクション」と表現しているんです。

他にも、作品の電子書籍化や、SNS 代行など、漫画制作以外のサポートのほ か、「まんがたりスペース」という漫画家さんの交流のためのワーキングスペー スを週末に設けるなどしています。それらは全て、「漫画家3大問題」を念頭に 「漫画家が漫画を描くことだけに集中できる環境を作る」という想いを追求する ためですね。

「まんがたり」より

知られざる漫画の力

現在の漫画の厳しい状況だけでなく、漫画の持つ可能性を「広告」という新しい形で言及して頂いた。

今後漫画の持つ可能性という文化を守っていくためには、どうやって、どんな可能性を追求するべきなのだろうか?

 漫画の「読ませる力」には、「ビジネス的価値」がある

先ほど、広告マンガというお話が出ましたが、やはり漫画には人を惹きつけるだけの力があるのでしょうか

例えば、通常の記事とマンガの広告が埋め込まれた記事を比べた時、後者のは数倍の PV を促したという成果データもあります。

というのも、漫画は文章に比べて、どんなに興味がない人にも最後まで読んでもらえる。それは、物語という「伝染力」があるから。マンガは、たとえそれが難解であっても前提知識を読み手に埋め込みやすく、 メディアとしての価値があるのです。

逆にいえば、物語のないマンガはマンガの手法がアンマッチで、文字にコマ割りと絵を付けただけでは「伝染力」を十分に発揮できません。

確かに物語のある漫画だったら、どんなにつまらない内容でも読んでしまうかもしれません。
漫画にはそんな可能性があったのですね。

例えば企業の説明会でも、社長による会社立ち上げのエピソードを漫画で説 明されたら読んでしまいません?(笑)

他にも、新人さんや外国の方に向けた社内マニュアルを漫画で説明する、なん てことも効果的でしょうね。それだけ漫画には「伝える力」及び「伝染力」がある んです。

このような漫画の力がもっと認識されれば、それがビジネスにおける新しい選択肢になるかもしれません。漫画家にとっても、そのような「メディア漫画」であれば、継続的な仕事の受注ができます。それと並行して、自身でも「アート漫画」を手掛けることができますよね。

ただの「娯楽」以上の「文化的価値」も

個人向けについてはどうですか?

学習マンガ」でも、漫画の魅力を活かすことができます。文字媒体の書籍が頻 繁に漫画化されることも、漫画の力を示す顕著な例ですね。

ここでもやっぱり、ただコマの中に絵と文字を入れるだけでも、ただ話をブツ切りに区切るのでもなく、漫画として「物語」を描くことが重要なんです。

例えば僕は今、「ネットマンガラボ」というオンラインサロンで「経済歴史漫画」を企画しています。歴史の学習漫画は既にたくさんあるけれど、それらはただ年代 をブツ切りに追っていくことが多い。一方僕らの企画している漫画は、経済を主軸にしていて、ものすごく歴史の流れが追いやすいんです。商人とそこにいた 庶民の関係を物語として追って行けるからですね。

「江戸時代の経済入門」(リンク先にて無料で読んで頂けます)

この企画は kindle のインディーズ漫画という分野で一位を取り、amazonランキングでも2018年12月で日本トップになり、amazonの日本法人から独占インタビュー取材も受けました(取材内容の『Kindleで可能性が広がるマンガ家のキャリアプラン』はこちら)。

ここまで沢山の人に読んでもらえたのは、やはり学習においても漫画の「伝染力」「伝える力」を発揮できたからだと思います。漫画の力を正しく使えば、教育や学習という領域でもこんな可能性があるんですよ。

漫画のこれからと「まんがたり」

漫画の秘める力と魅力についてお話して頂いた。さて、その漫画の力をどうやって使い、どう社会に広めていきたいのか、前田さんのこれからに対する想いをお伺いした。

漫画が国際化を促す?

オンラインサロンで作品を企画するということも、新しい漫画制作の形ですよね

経済歴史漫画」も、ネットマンガラボの大福組というグループで始まった企画です。このような形で、クリエイターの漫画制作に幅が増えれば、可能性は広がります。

また、日本文化を伝えるためにも、作品を海外に展開していきたいですね。逆に、海外の文化も漫画で知りたいです。

そのために、世界中でワークショップを設けたい、とも思います。漫画制作のノウハウを広めて、世界中で同じ漫画を様々な言語で読めるように、なんてこと もしてみたい。

それができるのも「漫画の伝染力」を感じているからなのでしょうか?

飛行機の中で隣り合った外国人の人と日本の漫画について話していたらめちゃくちゃ盛り上がってしまって、相手の家に招待されたことがあります(笑)

それだけ漫画の伝染力はすごい。海外との交流を深めるうえでも重要なツー ルになり得ます。

クソ面白いマンガを読み続けるために

以上紹介して頂いた漫画の可能性を追求するためには、どんなことが必要なのでしょうか

繰り返しますが、マンガ業界の現状を変えて行くことです。漫画家さんにも商業 誌以外の方法を知ってもらって、一方企業に漫画の力を知ってもらう。

さらには、「面白い市場かもしれない」というビジネス観点でこの市場に参入してくれる人も増えて欲しいので、全部オープンにして話したいし、「おいしい場所だ」と思ってくれるよう、発信していきたい。

それは、やっぱりマンガを残していきたいから。出版社をディスりたいとかでは なく、むしろその逆で、出版社が失ってしまった勢いを補えれば、と。

僕は死ぬ時に、「クソ面白い漫画が読め続けられて最高だった」と言いたいんです。

なるほど。漫画の可能性を様々な人に伝えるべく、そのTシャツなのですね

まさしく。

なんと、Tシャツ二段構え!

こんな使い方もありだと思うんです。

漫画って、すごいでしょう?

(まんがたりさんより執筆協力頂いた、漫画業界の現状は下記より)

マンガに関わる仕事がしたい!|マンガ業界の現状・課題・これから

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