Alones

あなたの働き方、生き方、暮らし方をデザインする

VR作家・渡邊徹が語る、VRの本当の魅力と可能性

VR作家・渡邊徹が語る、VRの本当の魅力と可能性

あなたは、アイドルの楽屋にあるペットボトルだ。

ペットボトルの視点から、彼女たちの一挙手一投足に目を凝らしている。いつしか、彼女らに口をつけて飲んでもらうその瞬間を、まだか、まだか、と待ちわびる———

…何の話か想像つくだろうか?

そう、これは他でもないVRの話だ。

VRと言えば、ゴーグルをつけることによってただジェットコースターなどのスリリングな体験ができるメディアだと思われがちかもしれない。だが、ビジネスにも徐々に影響を与え始め、カルチャーとしても我々の生活に浸透しつつあるという。

今回は、様々なVR作品を手掛けるVR映像作家、渡邊課課長、渡邊徹さんより、まだまだ語られることの少ないVRの本当の魅力と、体験を提供するために必要な「ある視点」を紹介して頂いた。

渡邊さんについて

渡邊さんプロフィール

株式会社コンセント所属。

「紙とWEBのデザイナーからキャリアをスタート。2015年から社内ラボとして『360度VR(全天球)』の制作を開始。

「ビジュアル言語のあらたな可能性」を通して、情報体験の在り方を追求し、さまざまなユーザーのタッチポイントで起こる体験から逆算した企画を作り、VR実写映像の撮影・編集までを行っているチーム「渡邊課」の課長。(引用:Qreators

———渡邊さんのご略歴をお願いします

紙やウェブ媒体などのデザインを手掛ける中で、「情報をどう編集して伝えるか」を考えてきました。

色々な表現手法を試しながら、新しい技術にも可能性を探っていたんです。例えば3Dプリンターも遊んで試していましたが、それらは生活の中に浸透していかなかった。

結局、技術のプレゼンテーション止まりになってしまったんですね。実際にどう使ったらいいか、遊んだらいいかなどをユーザーが知って、その技術を面白がれる状況を作れなかったからかもしれません。

VRと出会ったとき、これまでにない新しい情報体験としての魅力や可能性に夢中になったんです。沢山の人にその技術による表現の魅力を楽しんで使ってほしい、と考えるきっかけになりました。

———なるほど、VRには今までにない新しさを感じたのですね

初めてのVRはとても新鮮な体験でした。まさしく、瞬間的にそこに連れていかれるような。VRを人に見せた時のリアクションも面白くて、今までの2Dメディアとは全く違う体験を提供できる点が魅力でしたね。

しかもその没入感を作り出すコツさえ知っていれば、誰でも体験を生み出すことができる。

その気持ちが原動力になって、VRの「本当の魅力」、そしてそれを提供するための「ある視点」を知ってもらうために、ワークショップを開いたり、色々な作品を手掛けています。

まだ誰も知らないVRの魅力

VRの本当の魅力

———VRの「魅力」とはなんでしょう??

VRはただ360度見渡せるだけのメディアではありません。ある世界に連れ込まれ、没入感を味わう。そして、体験する人それぞれに発見が委ねられる。

VRは2D と違って、頭を振って自分で探すことができる能動メディアだからです。

その場所にあたかもいるような没入感が、VRがタイムマシーンとも言える大きな特徴です。

VRがタイムマシーンですか?

VRならば、撮影するときの空間をまるごと記録することができて、その空間にいつでも戻ることができます。

写真を撮る時のことを想像してみてください。例えば、家族の様子を写真に残そうしても、子供を撮る人の顔って映らないじゃないですか。でもVRなら、カメラを構えているお父さんの顔も、後ろで笑っているおじいちゃんやおばあちゃんの顔も、そのまま残すことができる。

自分が生まれた瞬間に立ち会うことも、亡くなった人に出会うことも———過去に戻るような体験すらも提供できるのが、VRならではだと思っています。

VRの価値を提供するための「ある視点」

―2D とはまた違うところにVRの価値があるのですね。

映画は、監督の視点を通して起承転結の体験を積み重ね、あるところでそれをブレイクして感動を作りますよね。

一方VRは、見る人を監督がつくり出したい世界観の入り口までは一気に連れていくことができます。ただその世界まで連れていくことはできても、視点は視聴者に委ねられるので、作り手の意図によって感動を作るのが難しい。

だから、2Dのようにある視点を積み重ねていく受動的なメディアではなく、VRは視点の選択を視聴者に委ねる、能動メディアだと考えるべきなんです。

見る人によってまるで発見が違う、VRの面白さはそこにあるんですよ。

———そんな体験を提供するために、VRにどのような論法が必要なのでしょうか

従来の2Dコンテンツと同じ考え方では、VR本来の価値を提供することはできません。

体験を提供するためには、見る人に役割を与えることが必要になります。その役割を視聴者が認識して初めて能動的にVRの中で立ち振舞えるようになります。

普通に実写VRを撮影してしまうと、現実の劣化版のような体験になってしまい面白みに欠けます。そこで僕が必要だなと思うのは、視点のファンタジー。

例えば僕が「アイドルのVRコンテンツを作ってください」と依頼を受けたとして。そのとき考える視点は、「アイドルとデートする相手」ではないんです。

そうじゃなく、ペットボトルになってください。アイドルの楽屋にあるペットボトルの視点です(笑)。

ペットボトルとして彼女たちの様子を盗み見ながら、今か今かと待ちわびて、ようやく飲んでもらう。ペットボトルというある視点、自分の置かれた状況から視聴者は自分の役割を理解していくようになります。そうすることで、主体性を持ってVRの世界で視点を選んでいくという行動につながっていきます。

そうすることで、ようやくVRコンテンツを楽しめるところまでいけるようになります。例えば、女の子の周りを飛ぶ蚊でも良いのですが、そうやって「ある視点」からの役割を用意することで、VRは今までになかった没入感ある体験を提供できるんです。

だから、「VRツアー」として博物館の中を網羅的に見せても、それが良質なVR体験を提供できるとは限りません。

VRがカルチャーにどう影響を与えるか

VRはエンタメとの関わり方を変えていく?

———VRはエンターテイメントにどのような影響を与えてきたのでしょうか

まだまだVRというエンターテイメントはカルチャーとして認められていないように思います。

とはいえ、VRはアーティストとの新しい関わり方を作っていく場所になるかもしれません。

音楽を例に出しますと、音楽の楽しみ方も大きく変わってきています。昔はCDを買うのが主流だったけれど、iPodの登場により、iTunesストアで音源をDLするようになって、ストリーミング型のスポーティファイで聴くようになったり…同時にライブの価値も変わり、アーティストとの関わり方も変わってきました。

その延長線上で、VRの真価が認められるようになれば、それが新しい楽しみ方、新しいアーティスト支援の仕方になり得るかもしれません。

ーなるほど。それにもVRだからこその「ある視点」が必要なのですね。

現実のライブが楽しいのは当たり前ですから、やはり現実の劣化版、ライブの下位互換では意味がありません。

アーティストに囲まれる視点やステージ上からの視点など、通常のライブではあり得ないような視点、そういうファンタジー要素を提供し、ファンとアーティストが能動的に体験を作って行ける場所にする。

さらに、ファンとアーティストがコミュニケーションする場所として捉えられたら、VRもカルチャーとして認識されるのではないでしょうか。

VRとカルチャーを掛け合わせることで生まれる新しい体験

———演劇のVRコンテンツを手掛けてるとお伺いしましたが、他のカルチャーと組み合わせることで可能性が広がりそうですね

そうですね、今は演劇の方や、お笑いの方とも組んだりしています。

ここでも繰り返しますが、音楽ライブのように一回性のものをVRで再現するのではなく、いかに新しい体験を提供するか。見る人を舞台に立たせ、主人公の視点を与える、そんな工夫が必要です。

冒頭では、「作り手の意図によって感動を作るのが難しい」と言いましたが、カルチャーとの組み合わせ方によっては、見ている人に感動などの様々な感情を喚起することができるかもしれません。


———なるほど、他の様々な感情ですね。

今まではジェットコースターに乗って「すげー!」とか、ホラーを見て「こえー!」というようなコンテンツばかりでしたが、色々なカルチャーと組み合わせて、喜び、哀しみ、感動や怒り…これらの感情を網羅してみたいですね。

話はそれるのですが、ビルゲイツが最近、色々な貧困地域を訪れてはそこのトイレの様子をVRで撮影したりしているんですけど、これが本当にビジュアル的にエグく迫って、キツさもダイレクトに伝わってくる。

最初はただ単に「汚い」っていうだけなんですけれど、ビルゲイツがその地区の置かれている状況を現地から解説していくことで、自分も今まさにそこ居るような体験になり、様々な感情が沸々と湧いて出てくるんです。

つまり、2Dだとそれが対岸の火事でも、VRならば提供の仕方によって現象を自分事に置き換えることができる。その強みを活かし、様々な感情が芽生えてくるようなコンテンツを作ってみたいです。

制作側の意図を伝えるものにするにはやはり演出は必要になってくるとは思いますが。そこは2D的な演出(例えばセリフやカット割りという考え方)ではなく、空間の力を引用しながらの体験ベース(空間を生かした、ボディーランゲージやパーソナルスペースを意図的に踏みこむなど)の演出を考えるべきだなと思います。

VRのこれから

———他にはどんなものを手掛けていきたいですか??

グラビアは撮っていきたいですね。僕はグラビア女優のことをアスリートだと思って撮ってるんですけど、その綺麗な身体を視聴者に届けたい。

あとはエンタメ以外に、福祉事業として、認知症の方が見ている世界を体験してもらい、当事者の行動や心境について理解してもらうコンテンツを手掛けたりもしています。

様々な方面からVRでどう生活にリーチしていくか探っていきたいからですね。どう使って、どう遊んで、どう届けるか。 ―ワークショップを開くのも、根底にある「沢山の人にVRを体験してほしい」という想いがあるからなのでしょうか

VRは自分事にした時が一番面白いんです。

例えば、自分で撮った写真、関連する何かがVR空間にあるのなら、友達がいるのなら…それがハードルを下げたりしますよね。

VRはラインやメッセンジャーで送れるなど身近になっていますし、冒頭の通り、VRで撮影して人々をその世界に引きずりこむのはそれほど難しいことではありません。一方で、VRを使った演出方法は、まだ学べる場所も少なかったり、知る機会もなかなかなかったり、まだまだこれから深まっていく領域だと思います。ただ作ること自体は気軽にできるようになっていきているので、VRを自分ごとにして楽しんでもらえたらよいかなと思います。

もっともっと、若い人にVRを楽しんでもらえるようになったらいいなーと思います。VRはおじさんだけのものじゃないので。

———VRのこれから次第で僕も女の子の周りを飛ぶ蚊になれますか?

蚊は良いですよ~(笑)

VRのこれからが本当に楽しみです。

渡邊さん情報
HP
Twitter(@_wato)
Youtube

LEAVE A REPLY

*
*
* (公開されません)

Return Top